PRP

PRP膝関節注射による膝関節症へのアプローチ

PRP膝関節注射による膝関節症へのアプローチ

膝の痛みが続くと日常生活に大きな支障が出てしまいます。

関節は体重を支え、歩行や階段の上り下りなど、さまざまな動きに関わりますが、変形性膝関節症などの疾患により痛みが起こると活動範囲が狭くなり、生活の質を下げる原因になります。

PRP膝関節注射は、患者自身の血液に含まれる血小板と成長因子を活用して組織の修復を促す再生医療の一種です。

ヒアルロン酸注射などの従来の方法で効果が得られにくい場合でも、手術を回避できる可能性があり、痛みの軽減や炎症の改善をめざします。

ここでは、PRP膝関節注射とはどのような治療なのか、治療を検討するうえで知っておくとよいことを詳しく解説します。

PRP膝関節注射とは

膝の痛みに悩む患者にとって、歩行や運動を続けながら症状の改善をめざすことはとても大切です。

PRP膝関節注射は、患者自身の血液から多血小板血漿(PRP)を採取して膝の関節内に注入し、痛みや炎症、組織の修復を促す治療法です。

関節軟骨の摩耗や炎症が進行している場合、痛みが強くなるだけでなく、変形性膝関節症へとつながる可能性があります。

PRP膝関節注射は自己の血液を利用するため、アレルギー反応や重篤な副作用のリスクが比較的少ない点が特徴です。

PRPとは

PRP(Platelet-Rich Plasma)とは「多血小板血漿」を意味し、血小板を多く含んだ血漿部分を採取して濃縮したものです。

血小板には組織を修復するとされる成長因子が含まれ、これらが損傷部位での修復や炎症のコントロールに役立ちます。

PRP膝関節注射は、こうした血液由来の成長因子を活用して、関節内の損傷した組織の回復をうながす再生医療の一形態です。

ひざの痛みと関節の仕組み

膝関節は大腿骨・脛骨・膝蓋骨など複数の骨で構成され、骨同士が衝突しないように軟骨や半月板がクッションの役目を果たしています。

この軟骨や半月板がすり減ったり炎症を起こしたりすると、痛みや可動域の制限が起こりやすくなります。

特に加齢や体重増加、長年の運動習慣などで膝への負荷が蓄積すると、変形性膝関節症が進行してしまうこともあります。

そこで、PRP膝関節注射によって再生能力を高めることで、組織の修復と症状の改善を期待できるのです。

成長因子がもたらす修復

血小板に含まれる成長因子は複数あり、炎症の抑制や血管新生の促進など多面的な効果があります。下の表に、代表的な成長因子と期待される作用をまとめました。

主な成長因子と期待される作用

成長因子主な作用
PDGF(血小板由来)血管の形成を助け、細胞増殖をうながす
TGF-β軟骨細胞の増殖を助け、組織修復に関与
VEGF新しい血管をつくり、炎症の回復を助ける
IGF-1組織の代謝をサポートし、回復を促進

これらの成長因子が患部に集中することで、炎症の軽減や組織の再生を助け、長期的に痛みを和らげることが可能です。

自己血液を使うメリット

PRP膝関節注射では患者自身の血液を用いるため、他人の血液を使う場合に比べて感染リスクやアレルギー反応が少ないとされています。

ヒアルロン酸注射と比較しても、長期的な効果を実感しやすいケースがあるという報告もあり、再生医療を希望する患者の中で注目が集まっています。

治療の適応と期待できるメリット

PRP膝関節注射はさまざまな膝関節の症状に利用できる可能性があります。

変形性膝関節症やスポーツによる靭帯損傷など、関節軟骨や周囲組織に障害が起きている場合、炎症の軽減とともに組織の回復が期待できます。

適応となる症状

  • 変形性膝関節症
  • 関節の損傷や靭帯の損傷
  • 半月板の軽度の損傷
  • 長引くひざの痛みや炎症

特に変形性膝関節症は、軟骨のすり減りが進行していく疾患で、ヒアルロン酸注射だけでは十分な効果を感じにくい場合があります。

PRPによって組織の修復をサポートすることで、痛みの軽減をめざします。

手術を回避する可能性

変形性膝関節症が進行すると、人工関節置換術などの手術が検討されることがあります。PRP膝関節注射は、保存療法として実施し、手術を回避できる可能性を模索できる選択肢のひとつです。

手術が必要かどうか判断するためにも、専門医による診察と検査が重要です。

従来療法との違い

PRP膝関節注射は再生医療という比較的新しい概念に基づく治療法です。以下の表では、PRP膝関節注射と従来療法(ヒアルロン酸注射など)を比較しています。

PRP膝関節注射と従来療法の比較

治療法主な作用効果の持続手術の回避自己血液の利用
ヒアルロン酸注射潤滑や保護を目的数週間〜数か月困難なし
PRP膝関節注射組織修復をうながす長期的に期待可場合により可あり

ヒアルロン酸注射は関節内の潤滑を改善し、一時的な痛みの軽減に有効です。一方、PRP膝関節注射は痛みの軽減だけでなく、軟骨の修復をサポートするという面で大きく異なります。

どちらも一長一短があるため、医師と相談しながら最適な治療計画を立てることが大切です。

患者が感じる効果

多くの患者がPRP膝関節注射後に痛みの軽減や可動域の拡大を実感するケースがありますが、効果の出方には個人差があります。

また、炎症をコントロールしやすくなることで、スポーツや日常生活に復帰しやすいとの報告もあります。

治療の結果として膝の状態が改善すると、ウォーキングや軽い運動を続けることが可能になり、膝まわりの筋力強化につながる場合もあります。

治療の流れと採血のポイント

治療を検討している方は、医師との相談を踏まえて具体的な手順をイメージすると安心できるでしょう。

PRP膝関節注射を行う際は、カウンセリングや診療、採血、濃縮作業、注射といったステップに分かれます。

カウンセリングと診療

初回診察では、患者の症状や既往歴、膝の痛みの程度などをヒアリングします。

同時に、画像検査(X線やMRIなど)を行い、関節の変形や損傷度合いを確認します。診察後、治療が適応となるかどうか、そしてPRP膝関節注射のメリットやリスクを医師が説明します。

血液の採取と濃縮

適応となった場合、患者の血液(一般的に20〜50mL程度)を採血し、遠心分離器を使用してPRPを分離します。

分離後の血漿部分をさらに濃縮して、血小板を高濃度に含む多血小板血漿(PRP)を生成します。下の表で、採血と濃縮の流れをまとめました。

採血とPRP濃縮の流れ

ステップ内容
採血20〜50mLほどの血液を採取。体格や症状によって異なる
遠心分離血漿・血小板・赤血球などの成分に分離
PRP部分の抽出血小板を多く含む血漿のみを取り出す
濃縮血小板をさらに高濃度に集め、成長因子を豊富に含む

膝関節への注射

生成されたPRPを膝関節内に注射します。注射による痛みを軽減するために局所麻酔を行うことが多いですが、麻酔の使用法や回数は院によって異なります。

注射後は少し安静にして膝の状態を確認し、問題がなければ帰宅できます。入院の必要はなく、基本的に日帰りで治療が完了します。

治療後の経過観察

治療後は痛みが急激に軽減する場合もありますが、多くは数週間から数か月かけて組織が修復され、痛みが和らいでいきます。

定期的に診察を受け、必要に応じて追加のPRP注射を受けるなど、医師のアドバイスに沿って治療を継続すると効果の持続を期待できます。

下記に、治療後に注意するとよいポイントをまとめています。

治療後に注意するポイント

  • 注射当日は膝に過度な負担をかけず、可能な範囲で安静にする
  • 適度な休息を取りつつ、医師が許可した範囲でリハビリや軽い運動を再開する
  • 痛みや腫れが強い場合は、無理せず受診のタイミングを相談する
  • 定期検診で膝の状態を確認し、今後の治療計画を見直す

再生医療としての安全性と副作用への対策

PRP膝関節注射は自己血液を使う再生医療のひとつであり、比較的安全性が高いと考えられています。一方で、少ないながらもリスクや副作用が完全にゼロというわけではありません。

炎症リスクや腫れの可能性

PRPを注射したあと、一時的に痛みや腫れが増すことがあります。PRPに含まれる成長因子が患部で組織を修復すると同時に炎症反応も引き起こすことがあるためです。

ただし多くの場合、数日から1週間程度で落ち着きます。

副作用への対処

副作用としては、感染症、過度な炎症、血管や神経などの損傷のリスクが考えられますが、極めてまれです。

万が一、膝の腫れや熱感が強まる、発熱や膝が赤くなるなどの異常がみられた場合、すぐに医師に相談してください。以下に主な副作用と対処法を表で整理しました。

主な副作用と対処法

副作用・症状原因の例主な対処
感染症(細菌感染)清潔操作の不足、免疫低下早めの抗生剤投与、再度の洗浄
過度な炎症反応や腫れPRP注射による反応冷却・安静、痛み止めの使用
注射部位の出血・内出血針の損傷による血管破綻圧迫止血、必要に応じて包帯処置
血管や神経へのダメージ注射時の誤差適切な手技、医師の技術が重要

衛生管理と感染予防

再生医療の提供には厚生労働省への提供計画の提出が必要です。

当院やクリニックなど、多くの医療機関で再生医療等提供計画や特定細胞加工物製造の届け出が受理されており、衛生管理の徹底や患者の安全性に配慮しています。

院内の清潔環境やスタッフの手技レベルが治療の安心につながります。

患者の相談窓口

不安や疑問がある場合は、カウンセリングや診療時に医師へ積極的に質問することが重要です。以下のような点を確認すると安心につながります。

治療前に確認しておきたいこと

  • どの程度の血液量を採血するのか
  • PRP膝関節注射の費用と支払い方法
  • 治療後のリハビリや運動の具体的なスケジュール
  • 他の治療法との比較や組み合わせの可能性

費用と診療スケジュール

PRP膝関節注射は自由診療として扱われることが多く、保険適用外です。医療費控除の対象になる場合もあるため、不明な点は税理士や医療機関に確認するとよいでしょう。

自由診療の費用

費用の目安はクリニックによって異なりますが、1回あたり10万円〜30万円程度になることが一般的です。

また、複数回注射を行う場合や、FD(Freeze Dried:濃縮液を凍結乾燥させた製剤)を用いたPRP-FD注射などは、費用が異なることがあります。

PRP膝関節注射の費用例

治療区分内容目安費用
PRP注射1回採血・濃縮・注射10〜30万円
PRP-FD注射凍結乾燥した血小板を使用30〜50万円
追加注射同部位への追加注射回数や内容による
検査費用などレントゲンやMRIの実施数千〜数万円

院内での支払い方法

クレジットカードや現金など、支払い方法は院によって異なります。分割払いや医療ローンに対応している場合もあるので、事前に問い合わせるとよいでしょう。

治療回数の目安

1回の注射で改善を実感できる患者もいますが、症状や進行度によっては複数回の注射を検討します。変形性膝関節症などの慢性疾患では、状況に応じて3回前後行うケースもあります。

医師との相談により治療計画を立てることで、より長期的な効果を期待できます。

予約と来院の流れ

PRP膝関節注射を受けるには、外来受診や電話予約が必要です。当日は診察後に採血を行うケースが多く、濃縮や注射まで含めて数時間ほどかかる場合があります。

病院やクリニックによってはMRIなど追加検査を先に行い、別日に注射を実施することもあります。

診察と来院の流れの例

ステップ主な内容
1. 予約電話・WEBで診察予約
2. 初回診察症状の確認・画像検査・PRP治療の説明
3. 採血必要量の血液を採取
4. 濃縮工程遠心分離器などで多血小板血漿を抽出
5. 膝への注射局所麻酔後にPRPを注入
6. 経過観察術後の痛みや炎症状態をチェック

よくある質問と受ける際のポイント

PRP膝関節注射に関する疑問は多岐にわたります。以下に代表的な質問とその回答例をまとめました。

治療を受けるタイミング

「痛みがどのくらいの段階で受けるべきか?」という相談がよくあります。変形が軽度の段階で受けると効果を実感しやすい可能性があると報告されています。

痛みが強くなる前に受診し、早めに治療方針を立てることをおすすめします。

採血量と痛みについて

採血時の痛みは採血針の程度で、一般的な採血と同程度です。注射時には局所麻酔を使う場合が多く、注射自体の痛みは比較的軽度です。

体調に不安がある場合は、事前に医師としっかり相談してください。

改善の実感と期間

「どれくらいで痛みが軽減するか?」に対しては個人差があります。数週間で効果を感じる患者もいれば、数か月かけて徐々に改善する方もいます。

膝関節は使い続ける部位のため、日常生活や運動習慣を見直すことでさらに改善しやすくなる可能性があります。

その他の再生医療との違い

PRP以外にもAPSや幹細胞治療など、膝の再生医療には複数の選択肢があります。いずれも血液や細胞を利用して組織の自己修復力を活用しますが、作用機序や適応範囲が異なります。

PRP-FD注射は血小板を凍結乾燥(FD)して高濃度化したもので、従来のPRP注射より濃縮率が高い点が特徴です。以下のリストに、PRPと他の再生医療の簡単な違いを示します。

他の再生医療との比較例

  • APS療法:血液を特殊なキットで加工し、抗炎症作用を高めたもの
  • 幹細胞治療:患者自身の骨髄や脂肪由来の細胞を抽出し、培養した細胞を注入する
  • PRP-FD:PRPを凍結乾燥させ、より高濃度に成長因子を含ませたもの

こうした違いを踏まえて、自分の症状や希望に合った治療を選ぶことが重要です。

他の再生医療とPRPの特徴比較

治療法細胞または血液由来目的費用目安
PRP血小板組織修復、炎症軽減10〜30万円/回
PRP-FD血小板(凍結乾燥)より高濃度の成長因子による修復促進30万円以上/回
APS血液(特殊加工)抗炎症効果の強化30万円以上/回
幹細胞治療骨髄・脂肪由来細胞を培養し軟骨等の修復を促進数十万円〜

下記で、PRP治療を検討する患者が抱えやすい疑問点をさらに紹介します。

  • 「PRP注射は何回くらい続ければよいのか」
  • 「他の治療(リハビリや手術)と併用できるのか」
  • 「日常生活で注意すべきことはあるか」
  • 「膝以外の関節にも適応できるか」

いずれの疑問も、担当医とのコミュニケーションで解消できます。自分の希望や生活スタイルに合わせた治療計画を一緒に考えていくことが大切です。

Bullet リストでのおさらい

  • 患者自身の血液に含まれる成長因子を活用して組織修復を促す
  • ヒアルロン酸より効果の持続性が高い場合がある
  • 採血から注射まで1日で行う日帰り治療が可能
  • 痛みや炎症が強くなる場合は医師にすぐ連絡する

さらに治療の効果を長続きさせるには、軽い運動や関節負担の少ない生活習慣を続けることが有効です。

ウォーキングやストレッチなどで、筋力維持と関節の柔軟性を高めると、膝にかかる負荷が軽減され、症状の再発を予防しやすくなります。

関節負担を減らす生活習慣の例

生活習慣効果
適度なウォーキング筋力維持、関節の潤滑
ストレッチ関節の可動域拡大、血流増加
体重管理膝への負担軽減
バランスのよい食事栄養補給、炎症の緩和
正しい姿勢を意識膝や腰への負担分散

関節の修復には時間が必要です。痛みが取れても、急に激しい運動を開始すると再び炎症が起こる可能性があるため、回復のペースに合わせて活動量をコントロールしてください。

医師と相談しながら段階的に負荷を増やし、無理なく膝機能を高めていくことが重要です。

PRP膝関節注射と診療の進め方

日々の診療の中で、多くの整形外科や再生医療のクリニックがPRP膝関節注射を提供しています。治療を受ける際は、下記のポイントをよく理解するとスムーズに進めやすくなります。

診療前のヒアリング

初診時には、痛みの強さや生活の中で特につらい動作(例:階段昇降、正座など)を具体的に伝えてください。これにより、医師が膝関節の状態をより正確に把握できます。

スポーツ障害やケガで痛めたケース、慢性的に痛みがあるケースなど背景は人それぞれです。

検査の流れ

レントゲンやMRIを撮影して軟骨のすり減り度合い、変形の程度、半月板や靭帯の状態などを詳しく調べます。

特にMRI検査では、軟骨や半月板の微細な変化まで捉えられるため、変形性膝関節症がどのステージにあるのかも推定しやすくなります。

治療の回数とタイミング

PRP膝関節注射は1回の注射でも痛みが軽減する例がありますが、変形が進んでいる場合などは複数回行うことがあります。

たとえば、3〜6か月の間隔で2回、3回と追加注射を行い、症状の改善度を見ながら治療計画を調整します。

再生医療は時間をかけて効果が現れるケースも多いため、短期間で結果を求めすぎず、定期的に来院して膝の状態を確認しながら進めることが重要です。

保存療法との並行

日常生活でのリハビリや物理療法、装具の使用なども効果を高める要素になります。

PRP膝関節注射を受けるだけではなく、筋力強化や関節負担を減らす対策など、保存療法を続けることが膝機能の向上につながります。以下のリストで、保存療法の具体例を挙げます。

保存療法の具体例

  • 筋力トレーニング(大腿四頭筋やハムストリングス中心)
  • 温熱療法や超音波療法などの物理療法
  • 膝への負担を軽減するサポーターや装具の着用
  • 体重コントロールと栄養バランスに配慮した食事

変形性膝関節症の進行とPRPの役割

変形性膝関節症(OA:Osteoarthritis)は、加齢や負荷の蓄積などによって軟骨が磨耗し、関節に変形が生じる慢性疾患です。

症状が進むと骨同士が直接こすれ合い、強い痛みや可動域制限、炎症がおきます。

変形性膝関節症の主な症状

  • 歩き始めの痛みが強い(いわゆる「始動時痛」)
  • 階段の上り下りや起立時に激痛が走る
  • 関節が肥大化し、膝の見た目に変形がみられる
  • 進行すると足がまっすぐ伸びなくなる

こうした症状が出ると、運動量や活動範囲が急激に低下し、筋力の衰えにつながります。

症状が重くなると、ヒアルロン酸注射や痛み止めの服用だけでは十分な改善を実感しにくいため、PRP膝関節注射を含む再生医療が注目されています。

以下の表に、変形性膝関節症の主なステージと治療方針の例をまとめました。

変形性膝関節症のステージと治療方針例

ステージ主な特徴主な治療方針
初期(軽度)歩行時に少し痛みがあるが、日常生活は可能保存療法、リハビリ、軽めの鎮痛剤
中期軟骨摩耗が進み、階段などで痛みを感じやすいヒアルロン酸注射、PRP膝関節注射
進行期関節の変形が顕著、痛みや腫れが慢性化PRP膝関節注射、PRP-FD、APSなどの再生医療
末期軟骨がほとんど消失、変形が大きく歩行困難人工関節置換術、強い鎮痛薬併用

PRP膝関節注射は、中期から進行期の段階で特に効果が期待できるとされており、症状の悪化を防ぐ手段のひとつです。

もちろん末期の場合でも、痛みの軽減を目指すために再生医療が選択肢となる場合がありますが、変形が大きい場合は手術との比較検討が必要になります。

軟骨修復へのアプローチ

変形性膝関節症は、軟骨が一度すり減ると元の状態に完全に戻ることが難しいといわれています。

しかし、再生医療によって軟骨や周囲組織の自己修復力を高めることで、痛みを軽減し進行を緩やかにすることを目指せます。

PRP膝関節注射はそのアプローチの1つであり、可能な限り手術を避けたいと考える方にも選択しやすい治療法です。

スポーツとPRP膝関節注射

スポーツ外傷や膝の使い過ぎによる炎症、靭帯損傷などでもPRP膝関節注射は効果が期待できます。

プロスポーツ選手が早期復帰のためにPRP注射を利用した事例も報告されています。軽度の損傷や炎症の場合は、PRP膝関節注射が回復をサポートし、競技への復帰を早める可能性があります。

ケガの種類とPRP注射の活用例

  • 膝靭帯の部分断裂
  • 半月板の軽度損傷
  • オーバーユースによる炎症
  • 膝蓋腱炎など腱の炎症

関節内へのPRP注射は、組織修復と炎症コントロールに有用であり、手術の回避やリハビリ期間の短縮を狙えます。

しかし、靭帯が完全に断裂しているなど、構造的な損傷が重度の場合は手術が優先されるため、医師の診察が欠かせません。

よくある誤解と正しい理解

PRP膝関節注射にまつわる情報はインターネット上でも数多く見られますが、正しく理解しておかないと誤解を招きやすい面もあります。

誤解1:「すぐに痛みが消える」

PRP注射は対症療法というより、根本的な組織修復をサポートする治療法です。

そのため、注射後すぐに劇的な変化があるわけではなく、数週間〜数か月をかけて徐々に痛みが和らぐケースが多いです。

誤解2:「どのような膝の状態でも治療ができる」

変形が非常に進んでいる、あるいは骨や軟骨が大きく損傷している場合は、PRP膝関節注射だけでは十分な改善が見られない場合があります。

手術の選択肢が適切になるケースもあるため、医師との相談が必要です。

誤解3:「保険が効くので安く受けられる」

現時点でPRP膝関節注射は自由診療扱いとなるため、保険適用されません。

費用が高額になりがちな点はデメリットですが、医療費控除の対象になる場合もあるため、年度末の確定申告などで一部が還付される可能性があります。

誤解4:「全員が痛みがなくなるまで回復する」

PRP治療には個人差があり、効果が出にくい患者もいます。生活習慣や関節の状態、年齢など、さまざまな要因が治療効果に影響します。

過度な期待を抱かず、医師の指示を守りながらコツコツと保存療法を続けることが重要です。

当クリニックの診療体制とアフターケア

当院ではPRP膝関節注射を希望する患者に対して、丁寧なカウンセリングと診察を実施し、一人ひとりに合わせた治療計画を提案します。

医師とスタッフの連携

血液の採取やPRPの濃縮工程は、整形外科医だけでなく専門スタッフとも連携して進めます。高いクリーン度を確保した環境で処理を行い、感染リスクを抑える努力をしています。

アフターケアの取り組み

注射後の安静期間や復帰時期の目安など、個別に指示を出して再発防止を図ります。

痛みが引いてきたら、リハビリや筋力トレーニングを提案し、患者が日常生活に戻りやすいようサポートします。以下に、アフターケアの具体策を示します。

  • 注射後、2〜3日は無理な動作を控える
  • 膝の負担を減らすためのサポーターや杖の使用を提案
  • 痛みが軽減したら、ゆっくりとリハビリを開始
  • 運動強度を段階的に上げて、再度の炎症や損傷を予防

再診とフォローアップ

PRP膝関節注射後は、経過観察のために数週間〜数か月おきに再診を行います。症状の変化や関節の状況を診ながら追加注射のタイミングを決定します。

必要に応じてMRIなどの検査を再度行い、組織の回復具合を確認することもあります。

まとめ:PRP膝関節注射で痛みと向き合う

PRP膝関節注射は、患者自身の血液に含まれる成長因子の力を利用した再生医療であり、膝の痛みや変形性膝関節症、スポーツ外傷などで悩む人にとって一つの有力な選択肢です。

自由診療であり費用は高額になりやすいものの、手術を回避しながら関節の痛みを軽減し、生活の質を高める可能性があります。

自分の膝の状態がPRP治療に適応できるのかどうか、どのくらいの回数が必要なのか、また効果の出方はどうかなど、疑問点は数多くあると思います。

まずは専門の医師に相談し、適切な検査を受けることで、納得感を持って治療を進めることが大切です。

以上

参考文献

O’CONNELL, Brendan; WRAGG, Nicholas Martin; WILSON, Samantha Louise. The use of PRP injections in the management of knee osteoarthritis. Cell and tissue research, 2019, 376: 143-152.

MEHEUX, Carlos J., et al. Efficacy of intra-articular platelet-rich plasma injections in knee osteoarthritis: a systematic review. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic & Related Surgery, 2016, 32.3: 495-505.

LAI, Lawrence P., et al. Use of platelet-rich plasma in intra-articular knee injections for osteoarthritis: a systematic review. PM&R, 2015, 7.6: 637-648.

FILARDO, Giuseppe, et al. PRP injections for the treatment of knee osteoarthritis: a meta-analysis of randomized controlled trials. Cartilage, 2021, 13.1_suppl: 364S-375S.

POURCHO, Adam M., et al. Intraarticular platelet-rich plasma injection in the treatment of knee osteoarthritis: review and recommendations. American journal of physical medicine & rehabilitation, 2014, 93.11: S108-S121.

JANG, Soo-Jin; KIM, Jae-Do; CHA, Seong-Sook. Platelet-rich plasma (PRP) injections as an effective treatment for early osteoarthritis. European journal of orthopaedic surgery & traumatology, 2013, 23: 573-580.

LAUDY, Augustinus BM, et al. Efficacy of platelet-rich plasma injections in osteoarthritis of the knee: a systematic review and meta-analysis. British journal of sports medicine, 2015, 49.10: 657-672.

COOK, Corey S.; SMITH, Patrick A. Clinical update: why PRP should be your first choice for injection therapy in treating osteoarthritis of the knee. Current reviews in musculoskeletal medicine, 2018, 11: 583-592.

SU, Ke, et al. Comparison of hyaluronic acid and PRP intra-articular injection with combined intra-articular and intraosseous PRP injections to treat patients with knee osteoarthritis. Clinical Rheumatology, 2018, 37: 1341-1350.

関連記事